開山一行上人手記――註―― 同寺は姪浜町二十四番地にあり。呉家四十九代の祖・虹汀氏の建立による。 夜明けに光を散りばめる見渡す限りの雪は、夕暮れには泥水と化して、河や海へとまた消えていく。今宵、銀の燭台に連なり華やかに時めく花も、暁にはごみとなって泥と化すだろう。三界は波上の紋のように交じり合い、一生は空に架かる虹のように儚い。言うまでもなく、人は短い間に悪縁を結び、しばしの間も因縁を離れることはない。生きていれば地獄の転変に堕在し、叫喚鬼畜の面を現し、死しても悪縁を子孫に伝え、業報永劫の苛責によって狂わされる。その恐れ、その苦しみは、いったい何に例えればよいのか、何と比べればよいのか。 ここ…