5月には咀嚼できていなかった「地図と拳」(小川哲)を色々考えた。結論から言えば、ブリューゲルの絵みたいな作品だった。 舞台は戦前〜戦争終了の中国の仮想都市。ここで群像劇を繰り広げるのが「地図と拳」キーワードは地図で、私の解釈では「地図」を作ることによって近代日本が世界を暗黙知から形式知へと変換することで勢力を拡大しようとした話と読めた。 中国に作る都市(フィクション)も実は形式知だが、この話は登場人物の心理だけを追っていると、全体が見えなくなる。小川氏はその優秀な頭脳で世界の複雑性を排除せず、歴史というダイナミズムの構造を書いている。「地図」という形式知をめぐる物語だからこそ、個々の人物の心理…