小池陽慈

夏休み前に、短大の国文科への推薦希望者は、作文の模擬テストを受ける事になった。私は作文は得意だったので、気軽な気持ちで作文を書いた。 その作文が、ものすごくほめられた。評価のところに、「エッセイ風のこの文体は、とても高校生の書いたものとは思えない。清少納言が現代に来て書いたようだ」とまで書かれていた。（さくらももこ『ひとりずもう』集英社文庫、2019） こんにちは。もしもその模擬テストを採点した先生がさくらももこさんをほめなかったら、もしも三島由紀夫の初等科２年生のときの担任の先生が三島の綴り方をほめなかったら、もしも朝井リョウさんの小学６年生のときの担任の先生が朝井さんの作文に何の興味も示し…

さらにいえば、このような旅行をしていると必ず「若いうちだけだよ」とか「思い出作りにね」とかいう言葉をはげましとして言われのだが、これもあたいは、イヤだ。旅行をいつまで続けるかということではなく、このようなやり方・精神で、三百年の人生を生きていく、そのためのむしろ準備体操の、そのまたアキレス腱のばしにすぎない小旅行において、このような言葉は実に退行的に聞こえる。（小川てつオ『このようなやり方で３００年の人生を生きていく［新版］あたいの沖縄旅日記』） こんばんは。昨日、豆腐ようという沖縄の珍味を食べました。ちょうど小川てつオさんの沖縄旅日記を読んでいたので、うん、timely。後学のために書いてお…

そこはもう、ガウディの世界一色だった。ガウディの世界に触れた人は皆「ガウディは、子供心を失っていない天才だ！！」と一様に言うが、まさしくその言葉に尽きる。ガウディは天才だし、子供心を失っていない。（さくらももこ『ももこの世界あっちこっちめぐり』集英社文庫、2021） こんばんは。昨夜、子供心を失っていないかつての同僚２人と久闊を叙しました。一人は４年ぶり、もう一人は７年ぶりです。 楽しい。 まさしくその言葉に尽きる一夜でした。小見出しをつけるとしたら「３人の世界あっちこっちめぐり」となるでしょうか。１８時から２３時まで、ざっくりいうと「私たちはどこから来たのか、私は何者か、私はどこへ行くのか」…

現代文の背景知識や用語は、いきなり本格学習レベルだと難しい言葉ばかりでまるで宇宙語のように感じてしまう人も結構います。 したがって、中学入試などで本格的に学習してきた人を除けば、ハイブリット型として紹介した「マンガでわかる」の基本編か、レベルを絞り問題・解説ともに充実した「ジャンプアップノート」をあたりから入るのがおすすめです。 大学入試 マンガでわかる 現代文重要単語[基礎編] 作者:小池 陽慈,ニャロメロン KADOKAWA Amazon 基礎からのジャンプアップノート 現代文重要キーワード 書き込みドリル 改訂版 作者:梅澤 眞由起 旺文社 Amazon ここからの本格学習は、学校で配ら…

現代文の勉強法や参考書ルートを紹介します。 勉強法 なんだかんだで演習量がものをいうのが現代文という科目でしょう。普段から読書をしている人が現代文が得意な傾向にあるのも事実だと思います。 でも、ただ闇雲に演習をこなすだけでは絶対的な力はつきませんし、効率も悪いです。漢字などの知識もある程度必要だし…いまさら読書を始めるなんて非効率にもほどがありますね。 そこで、まずは読み方や解き方を学ぶことが必要です。 読解の仕方(方法論)を学んだ上で演習を行うことで様々な問題に対応できる現代文の力を効率よく得ることが出来るのです。 また、現代文によく出てくる用語や漢字も併せて学ぶようにしましょう。 参考書ル…

togetter.comちいかわ お友だちとのつき合いかたKADOKAWAAmazonこういうの見ると子供の頃にかえって、子供の時に読みたかったって気持ちになりますね。しかし、実際には子供の頃に親から渡されてもこんなタイトルの本だったら絶対読まないだろうな…。子供の頃は背伸びしたがりだから大人向けの本が読もうとしてたと思う。そう考えると、ある意味、大人が「子供の頃に身につけられなかったこと」を学び直すためにこういう感じの本を読むのは正しいやり方なのだと思う。 というわけで。 私が実際に読んだ本で、「これは大人が読んでも面白いし役に立つ」と思った子供向けだけれど大人が読んでも面白い「読解力に関す…

（送ってもらったお礼に書いたもの） 御手洗靖大（紹介）／『和歌文学の基礎知識』（谷知子著）（小池陽慈編集『つながる読書─１０代に推したいこの一冊』所収） ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー （お礼、ここに書きますね♩） 本、送っていただいてありがとうございます！ そして、あのお手紙！ どちらも読み、御手洗さんの原点という場所を知ることができました。その種が播かれた場所に私もいたということですね。国語便覧の歌も、紹介されている谷知子さんの本も、そして、私の言葉の断片も、綿毛のついた種のように、あなたのどこかに揺れ落ちて、あなたはそのときからそれに水をやり、育て始めた。――それがいま、言の葉に…

こんにちは。 先日来、Twitterで（「X」とは呼んではやらない！）見かけたハッシュタグ「#いいねの数だけ本棚の本を紹介する」のツイートをしています。2月1日現在で6冊分の書影をツイートし、今日あと2冊をする予定でいます。以下には、その8冊のリンクを紹介しています。なお、これらの本については、SpotifyのPodcastでも語りおろしをしていこうと考えています。 本を読めなくなった人のための読書論 作者:若松 英輔 亜紀書房 Amazon 読書と社会科学 (岩波新書) 作者:内田 義彦 岩波書店 Amazon 影との戦い ゲド戦記 (岩波少年文庫) 作者:アーシュラ・K．ル＝グウィン,清水…

現代文講師・文筆家の小池陽慈 先生の著書『ぼっち現代文 わかり合えない私たちのための＜読解力＞入門』を読みました。好きなシリーズ「14歳の世渡り術」の1冊です。ぼっち現代文: わかり合えない私たちのための〈読解力〉入門 (14歳の世渡り術)作者:小池 陽慈河出書房新社Amazon タイトルの「ぼっち現代文」というのがとてもいいな、と思います。著者である小池先生も人間づきあいが苦手と書いていましたが、本を読めばいろんな人間づきあいを擬似的に体験することもできます。「はじめに」で小池先生が書いていた文章がとてもいいな、と思います。こんな感じで文章を読んでいく国語の授業もいいな、と思いました。 人間…

柿の実模様の鎌倉彫の食籠（じきろう）、秋（楓の葉と鹿の模様）という名の朱色の香合、椿の花と葉の模様の棗、お盆類（蝶が描かれた乾漆のお盆の箱には「春うらら」と書かれていました） ◎昨日、チャイムが鳴って大きな段ボール箱が届きました。金沢の父方の従妹からです。母の葬儀に声を掛けていなかったので私のブログの通夜と葬儀の記事をプリントアウトして郵送していました。それが切っ掛けで、この蛙ブログを訪ねて下さるようになったと葉書で。身内で私のブログを読んでいるのは妹に次いで2人目です。 箱を開けると手紙が入っていました。読んでみますと、亡くなられた夫君のお母さんが「数十年にわたり製作してきた鎌倉彫や乾漆の作…

「読者論」連載のための準備。 関谷 浩『古文解釈の方法 (駿台受験シリーズ)』駿台文庫 ISBNN:4796115056 辻孝宗（2023）『一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書』SBクリエイティブ ISBN:4815620164 柳生好之（2023）『柳生好之の現代文クロスレクチャー 読解編 (シグマベスト)』 文英堂 ISBN:457824508X 遠藤嘉基・渡辺 実（/2021）『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』 ちくま学芸文庫 ISBN:4480510737 斎藤哲也編（2023）『ちくま現代文記述トレーニング──テーマ理解×読解×論述力』 筑摩書房 ISBN:4480911049 …