40年前(執筆・2020年)。東海大学落語研究部の四年生に頭下位亭平頭(とうかいてい へいず)さんと言う先輩がいた。 この人は「俺が、俺が」と前に出るタイプではなく、いつも、一歩引いたところから冷静に現状を見ている人だった。 何故かいつも、首を少しかしげて歩く。骨でも曲がっているのだろうか? この首のかしげが「小さいお辞儀」にも見えるので先輩に失礼が無い。 初めて、平頭さんを部室で見た時は、ドラマの中の風来坊が持つようなズタ袋を肩からかけていた。確か「明日のジョー」の矢吹ジョーが下げていたサンドバッグみたいな入れ物だ。 勉強熱心でない落研がこんなに大きな荷物を持つ訳がない。いったい何が入ってい…