きいるん(基隆)港は、日本統治時、小さな漁村だった。明治33年に築港が計画され、治水事業、橋梁建設、湾口に向けて、平行・垂直に道路も整備され、美しい街並み、商店が立ち並び台湾随一の景観を誇った。(軍事要塞でもあり戦時中空襲の的となり破壊されることになる) そのような、きいるん港を後にして、キヨは船中で台湾での生活を懐かしんだ。 税関長夫婦の思いやり、出入りする人達との触れあい、楽しかった事、ときめいた事等を通して生きている喜びを知った。奥様が洋服を作ってくれたこと。見たこ事も食べた事も無い洋菓子を部屋に届けてくれたこと。色々な場面を思い浮かべ目頭が熱くなったりした。 一方、これから向かう内地で…