小説レビュー

【小説】「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」汐見夏衛 発行 2016年7月28日 著者 汐見夏衛 スターツ出版文庫 1945年、夏ー 戦時中の日本にタイムスリップしてしまった中学2年生の百合は、優しい人々と出会い、そして初めての恋をする…しかし、愛した人は特攻隊員。 悲しき時代を目の当たりにした少女に待ち受ける、苦しくも温かい結末とは…。 この小説も、実は実写映画が上映された頃に知った作品で、"原作"という事になりますね。 ずっと、こういった「戦争」をテーマにしている物は、読んだり観たりするのが辛くて避けて通っていた所がありました。 今回は、Kindleで配信されていたのを見つけたのと、…

星月渉『ヴンダーカンマー［電子書籍版］』（竹書房、2020年）を読了。 ウンダーカンマー（Wunderkammer）とは、15〜18世紀ヨーロッパにおける「驚異の部屋」を指す。珍品、奇品、異様なものたち――世界の断片を集めた空間。そのコンセプトが本作では「人の心」や「罪」と重ね合わされていく。 物語に登場する郷土資料研究会。それは唯香という人物にとって、まさに“ヴンダーカンマー”だったのかもしれない。常軌を逸した人々の心の在処を、ひとつずつ収集するように。 弱さを見抜く天才 郷土資料研究会 = ウンダーカンマー？ 子を産まぬ女と，許された愛 ランキング参加中読書 弱さを見抜く天才 「園美さんは…

『夜が明ける』西加奈子 著｜自分とは何か 🌅 📘 本の情報 タイトル：夜が明ける 著者：西加奈子 出版社：新潮社 刊行年：2020年 ジャンル：現代小説／社会派フィクション 📖 この本との出会い 西加奈子さんの作品はほぼすべて読んでいるので、その流れで手に取った1冊です。ファンとしての信頼があるからこそ、どんなテーマであっても安心して読み始められました。 📝 あらすじ（ネタバレなし） 主人公の１人は、吃音がありうまく話せないが、ある「役者」になりきることで、その映画に出てくるセリフだけは、上手に話すことができる。彼は、役者になりきることでうまく世間と距離を保ちながら生活を送っていた。「普通であ…

仲良しの先輩から、突如URLが送られてきた。近畿地方のある場所について開いてみると、”情報をお持ちの方はご連絡ください”という文言。どうやらこのサイトは掲示板のような形式で、ある場所にまつわる怪異や不可解な出来事を集めているようだった。1ページにひとつずつ記事が掲載されていて、その土地で起きた行方不明事件や心霊現象が書かれている。記事の切り抜き、張り紙のような文章、インタビューの文字起こし。どれも短い文章なのに、感じる大きな異質さ。「場所」という共通点で集められていたはずだが、だんだんと「同じ怪異」を体験している点もみえてくる。「なにこの場所！絶対行きたくないんだけど。」とぞわっとして、思わず…

こんにちは、なっちです！📚 今日は2021年本屋大賞第1位に輝いた心揺さぶる物語をご紹介します ✨ 52ヘルツのクジラたち【特典付き】 (中公文庫) 作者:町田そのこ 中央公論新社 Amazon 実は先日、実家で暮らす6人家族の夕飯時に、ふと「私たち、こうして一緒にいられて幸せだな」って感じる瞬間があって... 💕 そんなタイミングで出会った本が、この『52ヘルツのクジラたち』でした 🐋 ■ 本の基本情報 📖 タイトル：52ヘルツのクジラたち著者：町田そのこ出版社：中央公論新社ページ数：312ページ タイトルの「52ヘルツのクジラ」は、他のクジラには聞こえない周波数で鳴くクジラのお話なんです。…

【小説】「九月の恋に出会うまで」 双葉社 2016年2月13日 第1刷発行 著者 松尾由美 発行所 株式会社双葉社 あらすじ 感想 実写映画 おわりに 「九月の恋に出会うまで」というタイトル。 まさにラブストーリー。なのに、一筋縄ではいかないストーリーにページをめくる手が止まらないのです。 1人の女性の日常を描いた物語かと思いきや、謎に包まれた人物の登場や不思議な出来事、ついにはタイムパラドックスという異次元なテーマが飛び出し、まったりのほほんと進む恋愛モノをイメージして読み始めたら大変です！ 謎が解けるまで抜け出せません。 あらすじ 旅行代理店に務める北村志織は、休みの日には一眼レフカメラで…

【小説】「針の上で歌う：この世界から、音がなくなればいいのに」 南口綾瀬ウェブサイト 針の上で歌うーそれはどんな状況なのだろう？ この物語を読むまで、恥ずかしながら場面緘黙症（ばめんかんもくしょう）などについての知識が一切ないといっても良いほど知らない世界でした。 そして、令和2年未曾有のウィルスによって変わってしまった世界、コロナによって奪われた世界の中で見えた生き方と青春の物語。これが恋愛モノだという認識のないまま読み進めていましたが、最後の若い2人の想いに胸がギュッとなります。南口綾瀬さんによる音楽と香りとアイデンティティを描いた恋愛小説。 あらすじ 感想 著者の作品 おわりに あらすじ…