「つまり、新部長は真相に近づく兆候を感じ取りたかったと言いたいのか?」熊田がきいた。 「はい、憶測ですが。真相が明るみに出そうなら、何かしらの対処を施す構えだった」 「施設の崩壊を言っているのか?」 「最終的に私たちが真相を掴み、暴露する事態まで捜査が及べば、私たちもろとも建物ごと壊しかねない勢いだった……」 「飛躍しすぎだ」熊田はタバコを吸いきって、すぐにまたもう一本に火をつける。「聞きたいのはそのことか?」 「はい」種田は多少げんなりした様子で喫煙室に背中を向けた。二本目のタバコがお気に召さなかったのだろう。 思うに、斉藤彩子という新部長の信任は的確なタイミングだった。もちろん、四月という…