男は手元の手帳に何やら書き込んだ後に、また美和を見遣る。ひどく冷たい目だった。 「一点、確認させてください」 「・・・はい」 「お母様は、真尋さんの自殺未遂の理由について、何か心当たりはありますか?」 美和は男から視線を外して、足元を見る。そのまま視線を合わせていると心を見透かされてしまいそうな、そんな怖さを感じた。 真尋が自殺未遂をした理由。 美和には、14年前のあの夜のことしか思い当たることはなかった。 だけど、そのことを警察に告げるということは、真尋の、そして美和自身の罪を告白するということでもあった。 言えるわけがなかった。 「私も、真尋がなぜあのようなことをしたのか、分からないです・…