1899年(明32)盛陽堂刊。講談師・伊東陵潮(りょうちょう)の口演を速記したいわゆる講談本。上下2巻で読み応えがあった。所謂化け猫の怪談話の一つである。九州久留米藩の有馬氏の江戸屋敷で、狂犬に追われた猫を助けた腰元お滝が当主の側室に召し上げられると、古株の侍女たちがそれを妬み、陰湿なイジメでいびる。耐えかねたお滝は自害するが、その侍女たちも化け猫に殺される。最後は有馬氏のお抱え力士の小野川が命を懸けて退治する。本題の途中から当時の相撲取の世界に大きく脱線してしまい、しばらく角力銘々伝のような話が続くが、火消しをめぐる江戸っ子の心意気などの逸話も面白い。売り言葉に買い言葉の通り、面汚しに対して…