1987年発表の本書は、トラベルミステリー作家として名高い西村京太郎中期の作品。昨年「華麗なる誘拐」「D機関情報」と初期の作品を紹介してきた。1作ごとに大掛かりな仕掛けをした作品群で、ミステリーという枠を大きく広げたものと捉えている。それに比べてトラベルミステリーが中心となった中期以降は、安心して読めるものの上記の「仕掛け」は影を潜めた。 見栄えはいいがカネにだらしない恋人吉岡にだまされ、両親の遺産をはたいても返しきれない6,000万円の借金を背負ってしまったOLの風見ゆう子。吉岡は別の女と行方をくらまし、絶望した彼女は「北の国で死にたい」と連絡船で函館に着いた。 そんな「北斗1号」車中の彼女…