山の端《は》の 心も知らず 行く月は 上《うは》の空にて 影や消えなん🌕 夕顔の君へ by 光る君🪷 〜山の端の気持ちも知らずに、その山の端めざして傾きゆく月は、 空の中ほどで光が絶えてしまうのではないでしょうか。 🌸第4帖 夕顔🌸 呼び出した院の預かり役の出て来るまで留めてある車から、 忍ぶ草の生い茂った門の廂《ひさし》が見上げられた。 たくさんにある大木が暗さを作っているのである。 霧も深く降っていて空気の湿っぽいのに 車の簾《すだれ》を上げさせてあったから源氏の袖も そのうちべったりと濡れてしまった。 「私にははじめての経験だが妙に不安なものだ。 『いにしへも かくやは人の 惑ひけん わ…