夕ざくら白きを抱く比叡かな 山下喜子 夕方比叡山の中腹に白く咲く桜、山桜、が見える。比叡は夕日を浴びて金色に輝いている。その雄大な比叡は桜を、たとえば我が子を抱くように、抱きかかえている。深読みすると、桜は日本、比叡は仏教の象徴と解釈できる。さらに、この句から本居宣長の「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」を想起することが可能かもしれない。宣長の「朝日」がここでは「夕日」である。なお、「夕桜」ではなく「夕ざくら」と表記することにより、「桜」のイメージが強くなることを避けて夕日に浮かぶ比叡を主役とする効果が生まれている。 落花飛花とほく薄るる銃後の日 山下喜子 散る花は「大東亜戦争」で戦死…