作家。1930年生まれ。 1958年、「演技の果て」で第39回芥川賞候補。 1959年、「その一年」「海の告発」で第40回芥川賞候補。 1961年、「海岸公園」で第45回芥川賞候補。 1964年、「クリスマスの贈物」で第50回直木賞候補、「愛のごとく」で第51回芥川賞候補。 1965年2月、神奈川県二宮にて交通事故により逝去。享年34。
左から、片山友希、木村太一監督、MEGUMI。 6月18日(木曜日)。Sさんの運転で、「ららぽーと富士見」へ、木村太一監督の『FUJIKO』を見にいく。 上映時間まで1時間くらいあったので、通路にあったソファーにすわって、山川方夫(やまかわ・まさお)の短編「展望台のある島」(Kindle版)を再読する。 小説の舞台は神奈川県の「江の島」(作品では場所を特定していない)。わたしは鎌倉に親戚があり、江の島も小さなころから馴染みのある場所の一つだった。 「あの場所を描いているんだ」と一つ一つ思い浮かべながら、むかし読んだことがある。タイトルになっている展望台にも二度か三度登った。 今読むとどう感じる…
暦通り、最も寒い時期なのだと実感する日本列島、島岡美延です。大雪予報の地方の皆さん、本当に気をつけて。こんな時期に選挙に臨む関係者の方々、大変でしょうが有権者が必ず投票に行きたくなる準備をお願いします。 この作家は戦後ショート・ショートの名手と言われた人。1965年に34歳で亡くなった山川方夫(マサオ)の代表作にして遺作が令和のスクリーンに。映画『愛のごとく(23日公開)』をご紹介します。今週のラジオに、井土紀州監督と主演の古屋呂敏さんと宮森玲実さんが登場。井土監督には、谷崎潤一郎の『卍』『痴人の愛』を現代的に解釈した作品も。 小説家としてデビューするが今はライターとして生きるハヤオ(古屋)、…
今週は、積読消化週間!と書こうとして、ふと考えた。本を読んだところで物理的に本が消えてしまうわけではない。むしろ、読んだことでいい気になって、小生はまた買ってしまうだろう。そうなると地面から生えた積読茸は、天井目指してグングン伸びていく。途中でおそらくは崩れるのだけれども、原理上天井までの伸びしろがあるはずだ。だから、読むことは逆に本を増やすことにつながる、という皮肉な原理を発見して、読むのをやめた。 いや、そういうわけにもいかない。本がある以上読まれないと、それは存在しないも同じことになってしまう。それで、読むことを再開した。積読茸を成長させることになろうとも。では、何を消化するのか。思えば…
図書館に予約をしていた本が用意できましたと連絡がありましたので、 本日は借り出しのために出かけることになりました。(図書館からの連絡は メールでくるのですが、これがいつも迷惑メールに仕分けされることになり、 図書館のカウンターでも、そのことはアナウンスされているのですが、困る ことであります。迷惑フィルターも効きすぎると、影響が大きいことで。最近 の迷惑メールは巧妙な詐欺メールも多くなっていて、ほんとうに難しい。) ということで、本日に借りた本は、なぜここまで存在も知らなかったのかと いう一冊なのですが、その本については、また明日以降に話題とします。 図書館からの帰りには、ちょっと寄り道をして…
「ちくま」4月号が届いておりました。 楽しみにしている金井美恵子さんの「重箱のすみから」には最終回と あります。「ちくま」での連載エッセイは、終わってしまうのですね。このところ 隔月掲載になっていて、ちょっとうまく読むことができていないのですが、 ずっと続いていたエッセイが最終回というのはさびしいですね。 かって朝日文庫から刊行されていた「目白雑録」は中公文庫へと場所を 変え、再編集されてでましたが、「重箱のすみから」はまとまって一冊となる のでしょうかね。 (「目白雑録」には「日々のあれこれ」とありまして、「重箱のすみから」の 副題には「あれやこれや」とありました。いずれにしても同じような随…
平和ボケって、何だろう、平和であるからボケてしまうのか、ボケているから平和なのか、と、あまり正面切ってしない逡巡をした時がある。 大江の「遅れてきた青年」と同様的な描写を、山川方夫の「煙突」という作品に見た。彼らはほぼ同世代で、すなわち戦争期に少年時代を過ごし、ともに「国のために死ぬ」ことを教育されてきた二人だ。「死ぬべき生命」。しかもそれは「お国のため」というお墨付きの、いわば正当化された自死である。 山川さんはその小説の中で、「 ハリ があった」と登場人物に言わせている。 自分の生命が限られている。これを本当に知ること── が、「ハリ」のある生活をつくっていたのだろう、と僕は想像した。(そ…
最後にもう1つ、山川さんの短編を。「ゲバチの花」という小説。 前記のショートショートでは、かいつまんだら5、6行で終わってしまいそうで、引用することになったが、これは頭の中を辿れば書けると思う。それだけ、何回も読み返した小説だ。そして読み返すたびに、あたたかい、懐かしい、湿った気持ちになる。 主人公は、有給休暇をとって帰省していた。もう1日、実家にいる予定だったが、いたたまれなくなって出てきてしまった。生まれ育った家が、まるで他人の家になっていたからだ。 兄夫婦、ことに嫂あによめが実権を握り、両親は小さくなって暮らしていた。庭にあった、こども時分にその木陰で休んだりした木も切られ、バラが植えら…
たった三ページで終わるショートショート。字数にすれば、2000字もない。 でもこの山川さんの作品、問答無用に愉しい。 ストーリーをかいつまんで紹介すれば… 六本木のおシャレなバーで二人は出逢った。 モダン・ジャズの話をし、彼は トウモロコシ製の I・W・ハーパーを飲み、彼女はナポレオンのブランデーを飲み、飲むほどに理知的、鋭くセンスのいい言葉を濫発する彼女に、彼は惹かれはじめる。 そして二人は結婚する。彼女は女子大出のテレビアナウンサーで、彼は売り出し中のシナリオライター。『 新居の壁にはモダン・ジャズのレコード・ジャケットが並び、二人はそれぞれのお気に入りの洋酒を飲み、「私はなんたってセロニ…
「せっかく、米ソ二大国間で核実験の部分停止条約が成立したというのに、今夏の広島、長崎両市での原水爆禁止大会は、見ぐるしいありさまのままで終わった」 から始まる、山川方夫が新聞に書いていたコラムを全集で読む。 コラムだから、短い。が、やはり山川さんはほとんど天才だったと思う。その短い文のうちに、ぼくは激しい感動を覚えた。その内容もにもだが、山川さんという人から溢れるやさしさのようなものが、全集の全体からこぼれてくる。 なぜぼくは山川さんのことを書きたいか。たぶんご存知の方も少なく、できれば知ってほしい、という恣意が働いている。「数年前、広島を訪ねた折に、ある小さなレストランで偶然、白髪のひとりの…
作家の柳美里は、けっして幸せといえない子ども時代を送っていた、と何かの記事で見たことがある。その彼女が、唯一やすらげた場所が、本の世界だった、と。 いわば現実逃避としての読書。 そういう本との対し方を、このごろ僕もしている。「三田文学」(慶応大学の文学部が中心になって刊行されてきた文芸雑誌)で、編集者として精力的に活動していた山川方夫まさおの本にである。 ああ、小説って、美しいものなんだな、と、初めて気づかされた思いがする。 読み易い文体、豊富で圧倒的な語彙力、様々な分野での知識。山川方夫という人、そのままが小説に造形されて、うっとりするような魅惑的な世界、一度それを知ったらずっとそこに安住し…