明治17年〜大正13年(1884−1924) 詩人・児童文学者。本名土田八九十。現在の群馬郡群馬町に生まれたが、郷里の堤ヶ岡尋常小学校教員時代に、前橋の聖マッテア教会の英話夜学校に通い洗礼を受けた。その後伝道師として秋田、平、水戸などで布教。萩原朔太郎、室生犀星と交友を重ね、詩集『三人の処女』『聖三稜玻璃』などを出版。晩年は茨城県大洗にあって、詩集や童謡・童話など多数を残した。
写真70枚の大長編になりました。どうぞお時間のある時に。 町内会の労働奉仕、今月はプランターのコキアの引っこ抜きとイチョウの落葉のかき集めでした。誓ってそういうキャラクターではないにも関わらず、老人たちに従ってきちんと働きました。もちろんタダとは言わず、お寺の入り口にある木が月桂樹だったと半世紀を経て知って、駄賃代わりに三枚ほど頂きました。いま書斎で柔らかな芳香を放っています。 さて続いております「駅までさんぽ」。週2回、自宅から駅まで片道4キロを往復しております。いつもは月ごとに一つの記事にして翌月の頭に公開してますが、年を跨ぐのも微妙かなと思いまして。 月初めの水戸のトピックスと言えばこの…
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 手 山村暮鳥 しっかりと にぎつてゐた手を ひらいてみた ひらいてみたが なんにも なかつた しつかりと にぎらせたのも さびしさである それをまた ひらかせたのも さびしさである おやすみなさい
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ある時 山村暮鳥 雲もまた自分のやうだ 自分のやうに すつかり途方にくれてゐるのだ あまりにあまりにひろすぎる 涯のない蒼空なので おう老子よ こんなときだ にこにことして ひよつこりとでてきませんか おやすみなさい
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 自分は光をにぎつてゐる 山村暮鳥 いまもいまとてにぎつてゐる 而もをりをりは考へる 此の掌(てのひら)をあけてみたら からつぽではあるまいか からつぽであつたらどうしよう けれど自分はにぎつてゐる いよいよしつかり握るのだ あんな烈しい暴風(あらし)の中で 摑んだひかりだ はなすものか どんなことがあつても おゝ石になれ、拳 此の生きのくるしみ くるしければくるしいほど 自分は光をにぎりしめる おやすみなさい
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 自分はいまこそ言はう 山村暮鳥 なんであんなにいそぐのだらう どこまでゆかうとするのだらう どこで此の道がつきるのだらう 此の生の一本みちがどこかでつきたら 人間はそこでどうなるのだらう おお此の道はどこまでも人間とともにつきないのではないか 谿間(たにま)をながれる泉のやうに 自分はいまこそ言はう 人生はのろさにあれ のろのろと蝸牛(ででむし)のやうであれ そしてやすまず 一生に二どと通らぬ道なのだからつつしんで 自分は行かうと思ふと おやすみなさい
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 風景 銀色もざいく 山村暮鳥 いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな かすかなるむぎぶえ いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな ひばりのおしゃべり いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな やめるはひるのつき …
自分が今いる情景にピッタリ合う「和歌」や「詩」を 自然に諳じるられたら どんなに良いだろう もし一緒に居た相手が諳じたら 瞠目する 異性なら惚れるかもしれない 春だからね 私にも暗唱できる詩がある 今日 目にした風景に思わず諳じた詩の一節 山村暮鳥 「風景」純銀もざいく いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな かすかなるむぎぶえ いちめんのなのはな 菜の花を観ると必ず頭に浮かぶ 明るい陽の光の中 多種多様の色と形で楽しませ 花は人を惹き付け魅了する それは闇夜の中にでも 夜中の雨は止んだものの月…
つらつらと書いていた青森の特集、最後の記事です。 三内丸山遺跡と青森県立美術館。 道を一本隔てて現代と古代。 偶然なのか、アートの共演を果たしているかのよう。 問一)青森県立美術館 奈良美智さんの『森の子』 同じく奈良美智さんの『あおもり犬』 棟方志功さんの版画、『釈迦十大弟子』の一人。 問二)三内丸山遺跡 一度は歴史の教科書で見たことあるのでは?? 大型掘立柱建物と言います。 地面に残っていた跡を元に復元しているそうで、 実際、何のために使われていたのかはまだ分かってないそうです。 見張り台だったんじゃねえか?というのが有力みたい。 こんな可愛らしい雲が、縄文の奴と山々に被さっていて、 ふと…
山村暮鳥作の「手ぶくろ」を読みました。底本は『日本児童文学大系』第14巻(ぽるぷ出版)、親本は昭和16年(1941年)『春の膿のうた』(教文館)です。青空文庫で読みました。→図書カード:手ぶくろ 山村暮鳥(1884-1924)は、群馬県生まれの詩人、児童文学者。神学校在学中に詩や短歌の創作をはじめました。 卒業後はキリスト教の伝道師道師として各地をまわり布教活動をしながら作品を書きました。萩原朔太郎、室生犀星らと「にんぎょ詩社」を設立して機関誌「卓水噴水」を発行。 晩年は結核のため伝道活動を休止し、大正13年(1924年)40歳で亡くなりました。
12月10日(土)は、上京して『地下出版のメディア史:エロ・グロ、珍書屋、教養主義』(慶應義塾大学出版会、令和4年3月)の著者大尾侑子先生の講演と監修された展覧会を楽しんできました。同書の「あとがき」には、本書や展覧会に使われた発禁本、内容見本、チラシなど図書館にはない貴重な本や紙ものを保管し、古書市場で守った古書店への謝辞が書かれている。中でも特に世話になった17軒の古書店名が記載されている。具体的には、 金沢文圃閣 股旅堂 青木書店 古書往来座 近代書房 魚山堂書店 古書ワルツ よみた屋 フォルモサ書院 石神井書林 とんぼ書林 中野書店 まなぶ書房 史録書房 古書転蓬 文生書院 ハナ書房 …
前々回の新潮社の「現代詩人叢書」に室生犀星の『田舎の花』が含まれていることを示したばかりだが、これも犀星が萩原朔太郎と同じ詩話会で『日本詩人』の編集に携わっていたこととリンクしていよう。 しかし犀星の処女詩集『愛の詩集』は朔太郎の『月に吠える』がそうだったように、大正七年に感情詩社から刊行されている。それらの経緯と事情を記せば、同五年に朔太郎と犀星は詩雑誌『感情』を創刊し、八年まで全三十二冊が出された。発行兼編輯人は室生照道=犀星で、感情詩社からの発行だった。それもあって、犀星の『抒情小曲集』と『第二愛の詩集』も続刊され、感情詩社は所謂プライベートプレスにすぎなかったけれど、これらの詩集を出版…
2%の物価上昇は定着するか?期待形成から2%の物価上昇を考える . 日銀の植田和男総裁がきょう、就任1年を迎えた。 派手な政策をバズーカ砲のように打ち上げた黒田東彦(はるひこ)前総裁とは違い、当初は学者出身の、地味に見える力量を疑問視する声もあった。 ところが、3月の金融政策決定会合では大規模緩和策を終了させる方向に大きくかじを切った。就任1年もたたないうちに、出口戦略に乗り出した決断は評価できる。 サプライズを好んだ黒田氏と違い、大方の方針が事前に報道で伝えられるケースが目立つ。リークではないかという批判もあるが、市場にショックを与えない、植田流の巧みなやり方なのだろう。 そのせいか、大規模…
2024年2月に、遊佐さんと「storyteller」=物語ベースの相互題詠をしました。 その記録及び自作解説をしたいと思います。 はじめに、これは今回の記事に限ったことではありませんが、解説とは言いつつも、そう読まなければいけないという訳ではありません。もちろん、違った解釈をしたらだめということは決してありません。わたしの短歌やブログを読んでくださる方には、自由に楽しんでいただければと思います。 1) はじめに storytellerって? 2)設定を作る 作成:遊佐さん 3)設定を作る 作成:しま 4)遊佐さんの設定から連作を作る 作成:しま たんぽぽの明るい黄色はどこででも軽やかに揺れひ…
甲辰年二月初二。気温摂氏▲1.8/12.6度。晴。家人がこんなスタンプラリーをやつてゐると教へてくれてスタンプ集めるのが好きなので本日家人と実行。 水戸のロマンチックゾーン 早春のスタンプラリー | 水戸観光コンベンション協会 昔でいふところの常磐村の谷中一帯でスタンプを集める。水戸八幡宮から始めて廿三夜尊、保和苑のあたりがラリーの中心。保和苑の山村暮鳥詩碑を保和苑から少し離れた廃寺の墓地にある暮鳥墓と勘違ひで墓前で「スタンプがない!」と焦る。水戸藩筆頭家老中山備前守墓地もてつきり水戸藩の常磐共同墓地にあると思つてゐたら桂岸寺。いずれにせよ徒歩圏内で幼い頃から遊んでゐたエリアなので2時間余でス…
まだ蝋梅に間に合いました。
澄み渡った空とのどかな河川―――だ。 日本の象徴的な平和な光景を前に、 顔の表面だけ残して『全身』が忽然―――と、 消えてしまったような放心と虚脱感・・・。 穴倉の興奮、強靭で、成熟し、完璧―――だ。 何故―――で、ズレてゆく。 何故、乗ったと思った瞬間に、迷いが、 霊感の自由さを奪って―――ゆく・・。 空気が百足や蜘蛛みたいに足を生やして―――ゆく。 ビートの中にブレーキがある・・、 理解し合う、狂った渇き、その瞬間の壊れた息苦しさ・・。 ガリヴァー旅行記に出てくる空に浮かんだ島みたいな、 ―――【雲】だ。 “山村暮鳥”が遠くな――る・・。 遠くには工場が見える。 「…
甲辰年正月初四。気温摂氏▲2.5/15.6度。晴。 日がだいぶ長くなつてきたので夕方の散歩。今年初めてかも。廃業して更地になつた元パチンコ屋のゲートはミッキーマウスがお出迎へ。 保和苑是一座毗鄰二十三夜尊桂岸寺的花園,以繡球花聞名。據說這個名字起源於遙遠的元祿時代,當時德川光國因為喜愛寺廟的花園而將其命名為“保和園”。山村暮鳥の〈梅〉の石碑の傍に紅梅が咲き始めてゐた。 白梅や 老子無心の 旅に住む 兜太 迴轉神社是位於茨城縣水戶市的神社。 供奉江戶末期動亂時期、安政大監獄、櫻田門街事變、東禪寺事變、坂下門街事變、天狗之亂、會津戰爭。 神社的名字來自藤田東湖的書《迴轉詩史》。このとても静かな猫「…
小学校での朗読ワークショップでした。「まずは実演をして欲しい」とのオーダー。授業でやったばかりの「ごんぎつね」が良い、とのこと。 カリンバに、鈴に、カエルギロ(木魚の音にしました)なども使って。 このお話、つらすぎて……読み終わって、どうやってワークショップってテンションにするんだよ、と言うミッション。子供達ではなく、自分のね。 なんとかテンションを戻し、朗読にも色々あるねって話から、詩は自由に解釈出来るよと、山村暮鳥の「雲」を例に、子供にも参加してもらってあれこれ。 おまけで、谷川俊太郎「いるか」をリズムに乗せるとどうなるか、とか。 最後は母音の話をして元気いっぱい皆で「アクションあいうえお…
我が愛する詩人の傳記 室井犀星 カバー破れ有シミ日焼け強ACSノーブランド品Amazon ここ3年半ほどの間、あれこれものを考えるにしても、手もとにある古書雑書の類と、そこから派生するとりとめない問いに関して求めて読むものをベースにして算段することしかできなくなっているけれども、そんな老害隠居化石脳の道行きでも、いくつか何となく焦点となるお題のようなものが、それなりにできてきていたりはする。そんな中のひとつにこのところ、いわゆる「詩」に関するもの、とりわけ本邦の「近代詩」「現代詩」と呼ばれてきたような領域に関するものが含まれている。 とは言うものの、そもそも「詩」なんてのにまともに向き合ってき…
1.小学生が読んではいけない本 〇「人気シリーズ」 〇「名作のダイジェスト本」 〇ライトノベル 〇大人に人気のファンタジー 2.中学生でよむべき本 読書=教養 読むべき本 小学高学年で読んでほしい本については、こちらの記事で書きました。 peter-lws.hateblo.jp 今回は、小学生で読んではいけない本、そして中学生になったら読むべき本について書いてみたいと思います。 1.小学生が読んではいけない本 普通に出版され、そして売られている=買われている本について、「読んではいけない本」扱いするのも失礼な話ですよね。ここで言いたいのは、「頭脳が発達する大切な時期に読むのは時間の無駄である本…
僕は今でも紙の新聞を毎日読んでいます。ネットニュースも読みますが、やっぱり「一覧性」という点においては紙の新聞の方が圧倒的に優れています。でも最近の新聞は読むところが少なくなってきているような気がします。誌面の多くを占拠している「膝関節痛のサプリメント」や「育毛剤」、そして「尿漏れ対策パンツ」などなど、ページをめくるたびに高齢の読者層を意識した広告が目に飛び込んできます。選挙と一緒で、紙の新聞も高齢者しか読んでいないんだろうなあと思うと複雑な気持ちになります。 さて、そんな紙の新聞の中でも毎朝楽しみにしているものがあります。それは新刊や人気書籍などが紹介されている”書籍広告”の欄です。家の近所…
仕事帰りに、千里中央まで足を延ばしました。 オトカリテ(旧・ピーコック)の建物に工事用覆いが掛けられているのを見て、ずいぶんご無沙汰したことに気づきました。 かつては、日常的によく通ったものでした。気の張るお遣いものには、やはり、百貨店の包装紙は強い味方でした。 今や、地元のお品の方が喜ばれるようになり、すっかり足が遠のいていたのでした。 そんな人が多いわけでもないでしょうに、平日の昼間なのに駐車場ががら空きなことに、まず、びっくりしました。 人の流れが、変わってしまったのですね。 来年から千里中央がターミナル駅ではなくなるわけで、目先の利く商売人は、此処に投資することは避けているのでしょう。…
1972年4月、尼子会事務局から刊行された佐藤久弥による猪狩満直(1898~1938)の評伝。尼子会双書第6集。頒布先は平読書クラブ。 目次 序 真壁仁 序曲 「開墾地風景」 1入植 2愛のうた 3妻の死 4詩との出合い 「播種者」 詩作の動機 1生い立ち 2いわき平と暮鳥: 3三野混沌 4満直と暮鳥 5「播種者」の意義 『移住民』のうた 1暗転 2馬そり 3友情 4「移住民」の出版と反響: 終曲 合唱曲 1吹雪の夜の会話 (清水脩作曲) 2日曜日 (石河清作曲) 猪狩满直年譜 山村暮鳥「雲」は相聞歌であるか 「地方文化」への提言 「猪狩満直と移住民」を読んで(蓬莱信勇) あとがき NDLで検…
遅くなってすみません。僕が選評を書くのが遅かったせいで遅れてしまいました。アットマーク以下は各応募者のTwitterアカウントです。 【最優秀賞】 神様が帰ったあとのガラス戸が少し開いてる、甘いんだよな(須藤摂 @_sudO_Osamu_) この一首が、今回応募された作品のなかでもっとも印象に残った。得体のしれない青春性を感じた、といえばいいだろうか。 友達と遊んだあとのような作中主体のテンションと、じっさい書かれている「神様が自分のところに来て、帰っていった」という奇妙な場面設定のあいだのズレが、「甘いんだよな」という口調のもつ雰囲気を最大限に引き出している。「ガラス戸」という道具立ても、古…