満願の夜、八王子の社の参詣人の一人で、 奥州の方から上京してきた少年が、突然、気を失って倒れた。 人々がいろいろ手を尽して介抱すると、 まもなく息を吹き返したが、 今度は、よろよろっと起き上ると、 人々の呆然とした顔を尻目に、舞を舞い始めた。 舞うこと半時間ばかりすると、 山王の神がのり移ったのか、 少年は、不思議なご託宣を述べるのであった。 「皆様方よ、確かにお聞き下さい。 関白殿の母上様は、今日で七日、この社におこもりになった。 それは知っての通り関白の命乞いに来たので、 この際母上には、三つばかり、願立てをされたのです。 それは、一つは、 この社の下段にこもっている片輪に混って、一千日の…