今日は遅番だった。朝、古井由吉『山躁賦』を読み終える。矛盾するものが合一して1冊の本の中に収められているように感じた。死を見据えて書くことで生きることの真髄に触れる。あるいは俗世間に染まり切ることで聖なるものの尊さを知る……古井由吉の書くものを読むと、彼自身は決して修行僧というわけではなく1人の小説家であり俗世に生きる人だったわけだが、そんな彼から見えた世界の不思議について考えさせられる。そしてその世界の謎を書く筆は静かに狂う。その狂気を恐れずにドライブさせ続けたところにこの書き手の凄味があると思った。今年の年越し本について考えた。ちょっと前までジョン・アーヴィングの傑作長編を読み進めて年を越…