2024年は映画監督・岡本喜八(1924〜2005)の生誕100周年。 ということで、年始に出版された前田啓介『おかしゅうて、やがて悲しき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像』を読んだ。著者は1981年生まれの読売新聞記者だが、映画記者ではなく、文化部で近代史を担当しているという。すでに『辻正信の真実 失踪60年—伝説の作戦参謀の謎を追う』や『昭和の参謀』などの著作がある。 これは岡本喜八の「評伝」ではない。なので、映画製作の話を期待して読むと肩透かしを食うだろう。本書のテーマは岡本喜八という個人を通して、「1924年生まれの戦中派の心情を探る」というもの。しかし、監督の作家性に興味のあるファン…