岩泉線は、かつて茂市駅-岩泉駅間38.4kmを結び、全線単線非電化だった、東日本旅客鉄道(JR東日本)の路線。
2010年7月31日に、土砂崩れによる列車脱線事故が発生し、同日より全線で運休し、代行輸送を行っていたが、2014年4月1日付で廃止された。
当初は岩泉から先、三陸鉄道北リアス線・小本駅付近を目指すとしていたが、鉄路は到達しなかった。
現存するJR路線では最も利用者が少なく*1、1980年10月に国鉄再建法が成立した当時から、第2次特定地方交通線に選定され廃止承認が申請されていた。しかし、並行する道路が未整備であるとの理由により、特定地方交通線から除外され、廃止を免れていた*2。
2010年7月31日の運休前までは、岩泉駅まで行く列車は1日3往復(朝1往復、夕方2往復)しかなかったが、早朝に岩手和井内駅折り返しの列車が1本設定されていた。一部列車は茂市駅から山田線に直通し、宮古駅まで運転されていた。
岩泉駅の近くには龍泉洞という観光地があるが、ここを訪れる観光客の大半は盛岡や宮古からのバスを利用し、岩泉線を利用して行く人は殆どいない。
2010年7月31日に押角駅−岩手大川駅間で発生した土砂崩壊により、同日7時33分頃、、茂市駅発岩泉駅行683D列車(1両)が線路上に堆積した土砂に乗り上げて脱線、乗客3名と乗務員2名が負傷した。
これ以降、岩泉線は全線で運転を見合わせ、マイクロバスによる代行輸送を行っていた(列車同様、一部の便は宮古まで直通している)。
社外の有識者を中心とした「岩泉線土砂崩壊災害原因調査検討委員会」による全線の安全性評価等を行った結果、上記と類似した大規模な岩盤崩壊や、列車の運行に影響のある大きな落石の恐れのある箇所が多数存在することが判明。これを受けてJR東日本は、列車の安全運行を確保するために必要な方策を検討した結果、安全対策に少なくとも約130億円という多額の費用が必要であると試算。
2012年3月30日、JR東日本は利用客の減少(民鉄などとの比較でも全国最低レベルという)や、上記の多額な復旧費用や安全対策費用を理由に岩泉線の鉄路としての復旧を断念すると発表した。
廃線が実行されると、JR東日本の営業路線としては整備新幹線開業による並行在来線の経営分離(IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道、しなの鉄道、JRバス関東・碓氷線)以外では初のケースとなる。なお、JR東日本では岩泉線の廃線後の交通手段について「当社が責任をもって確保する」としており、廃線後は代替バスによる運行は継続する方針とした。
2013年11月7日、JR東日本は、岩手県、宮古市、岩泉町といった沿線自治体をはじめとした関係者への説明を行い、鉃道の廃止とバスによる代替輸送について合意に達した。
2013年11月8日、JR東日本は、国土交通大臣に2014年11月9日を予定日とする鉄道事業の廃止届出を行った。
2014年1月7日、国土交通大臣がJR東日本に対し、「廃止の日を2014年4月1日に繰り上げたとしても公衆の利便を阻害する恐れがないと認める」旨の通知を行った。
2014年1月8日、JR東日本は国土交通大臣に対して鉄道事業廃止日を2014年4月1日に繰り上げる旨の届け出を行った。2014年4月1日、廃止。同日から東日本交通により、代替バス「岩泉茂市線」が運行されている。
駅名 | 営業キロ | 開業日 | 所在地 |
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茂市駅 | 0.0 | 1934年11月6日 | 岩手県宮古市(旧下閉伊郡新里村) |
岩手刈屋駅 | 4.3 | 1942年6月25日 | 岩手県宮古市(旧下閉伊郡新里村) |
中里駅 | 7.2 | 1942年6月25日 | 岩手県宮古市(旧下閉伊郡新里村) |
岩手和井内駅 | 10.0 | 1942年6月25日 | 岩手県宮古市(旧下閉伊郡新里村) |
押角駅 | 15.8 | 1944年7月20日 | 岩手県宮古市(旧下閉伊郡新里村) |
岩手大川駅 | 25.3 | 1957年5月16日 | 岩手県下閉伊郡岩泉町 |
浅内駅 | 31.0 | 1957年5月16日 | 岩手県下閉伊郡岩泉町 |
二升石駅 | 33.8 | 1972年2月6日 | 岩手県下閉伊郡岩泉町 |
岩泉駅 | 38.4 | 1972年2月6日 | 岩手県下閉伊郡岩泉町 |
1942年6月25日、日本国有鉄道が小本線 茂市駅−岩手和井内駅間開業。
1944年7月20日、岩手和井内駅−押角駅間開業(押角駅は貨物営業のみ)。
1947年11月25日、押角駅−宇津野駅間開業。
1948年11月26日、風水害により全線不通。
1949年3月5日、全線営業再開。
1957年5月16日、宇津野駅−浅内駅間開業、宇津野駅廃止。
1966年10月1日、中里駅開業。
1972年2月6日、浅内駅−岩泉駅開業、岩泉線に改称。
1982年11月15日、茂市駅ー浅内駅間貨物営業廃止。
1982年11月22日、特定地方交通線第二次廃止対象線区として廃止承認を申請。
1985年8月2日、代替道路未整備を理由に廃止対象から除外。
1986年3月3日、岩手和井内駅、浅内駅無人化に伴い、茂市駅−岩泉駅間をスタフ閉塞化。
1987年4月1日、東日本旅客鉄道が承継。
2008年7月24日、岩手県沿岸北部地震により全線不通。
2008年7月25日、全線営業再開。
2010年7月31日、土砂崩れによる列車脱線事故により全線不通。
2010年8月2日、全線で代行輸送開始。
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震の影響により、代行輸送を休止。
2011年3月20日、代行輸送を再開
2012年3月30日、JR東日本が鉄道路線を廃止し、バス輸送へ転換する方針を発表。
2013年9月5日、JR東日本が路線廃止を正式に沿線自治体に通知。
2013年11月7日、JR東日本と沿線自治体が路線廃止合意。
2013年11月8日、JR東日本が廃止届を提出。
2014年1月8日、廃止日繰り上げ届出。
2014年4月1日、全線廃止。