鳴門秘帖:吉川英治 1927年(昭2)大阪毎日新聞社刊。 1928年(昭3)平凡社、現代大衆文学全集第9巻所収。 1939年(昭14)新潮社刊。 鳴門秘帖:吉川英治、岩田専太郎1 『新聞小説史』で、吉川英治の出世作『鳴門秘帖』も新聞小説として大正末期から昭和にかけて連載されたものだったことを知って読んでみようと思った。当時から絶大な人気があったらしく、各社から単行本、全集本などが出されたが、それぞれに別々の画家による挿絵が入っていた。全3巻の大長編だが、最初の上巻にあたる「上方の巻」と「江戸の巻」(全体の3分の1)で読了とした。達意の文体による典型的な伝奇小説である。十年前に公儀隠密として阿波…