訓読 >>> 410橘(たちばな)をやどに植ゑ生(お)ほし立ちて居て後(のち)に悔ゆとも験(しるし)あらめやも 411我妹子(わぎもこ)がやどの橘(たちばな)いと近く植ゑてし故(ゆゑ)にならずはやまじ 412いなだきにきすめる玉は二つなしかにもかくにも君がまにまに 要旨 >>> 〈410〉橘の木を庭に植え育てて、その間じゅう立ったり座ったり心配したあげく、人に実を取られて悔やんでも、何の甲斐がありましょう。 〈411〉あなたのお庭の橘は、あまりに私に近く植えてあるものですから、我がものとしないわけにはいきません。 〈412〉頭上に束ねた髪の中に秘蔵している玉は、二つとない大切な物です。どうぞこ…