幕末という激動期。自らの信念を貫こうと時代のうねりに逆えば、人間一人など跡形もなく滅びて消えてしまう。そうして歴史の闇に消え去った人は、少なくなかったはずです。 「幕末遊撃隊」(池波正太郎、新潮文庫)は、若い剣士の生き様と死までを、一条の閃光のように描いた小説です。鮮やかであるほど、歴史という怪物の前では儚い。 外国から開国を迫られ、右往左往を繰り返す江戸幕府。天皇のokを待たずに下田を開港しちゃったもんだから「尊皇攘夷」(つまり天皇家を尊べ!、西洋など追い払え!!)が大ブームに。ブームに乗った薩摩と長州、幕府を糾弾しながら、藩単独で外国船に大砲を撃ちかけたりして、逆に痛い目に遭った。さらにこ…