僧兵の引揚げた後、取り残された神輿について、 俄かに、公卿会議が開かれた。 とにかく、いささか、不気味なお土産《みやげ》だけに、 いくたの論議が繰り返されたが、 結局、保延《ほうえん》四年神輿入洛《じゅらく》の前例にならって、 祇園の神社に奉置することに話が決まり、 夕刻を選んで、祇園別当、澄憲《ちょうけん》の手で、 祇園の社に入った。 神輿に突き刺った矢は神官が抜いた。 昔から、山門の僧兵を先頭に、 都に押しかけたことは、何度かあったが、 今度のように、神輿に矢が当ったのは始めてのことであった。 それだけに、一般の庶民はもちろん、 殿上人の中にも山王の祟りを恐れて、 戦々兢々《せんせんきょう…