山門の衆徒が、前座主《ざす》の流罪を妨害して、 山へ連れ戻した知らせは、後白河法皇をひどく怒らせた。 「山門の大衆どもは、勅命を何と心得えて、 このように言語道断のことをするのだろうか?」 側に侍《はべ》っていた西光法師も、 前座主帰山の知らせに何か手をうたなくてはと、 考えていた矢先だから、ここぞとばかり、一ひざ進めると、 「山門の奴らの横暴な振舞は今に始った事ではございませぬが、 此度は又以ての他の狼藉《ろうぜき》振り、 これは余程、厳重な処分をいたさねば、 後々までも禍恨は絶たれぬものと思います」 したり顔に申し上げた。 とにかく讒臣《ざんしん》は国を乱すということわざがあるが、 西光ら…