『椿説弓張月』は『南総里見八犬伝』と併せて滝沢馬琴の代表作だと知っている。原作を読むこと無く、映画、歌舞伎・演劇、漫画など様々な媒体を通して部分的に、脚色された変形版により何となく親しんでいるにすぎない。この著者の私家本も原作の発展形の一つといえるだろう。 本作を読んでから、少しネット検索などで情報を入手し、馬琴について初めて理解を一歩深めた。本名は滝沢興邦(旧字体では瀧澤興邦となる)。当時は曲亭馬琴という作者名で世に流布していたそうだ。『椿説弓張月』は江戸時代後期の文化・文政時代に絵入り読本として貸本屋などを通して一般庶民にも読まれたという。文化5年(1808)当時、江戸には665軒の貸本屋…