海音寺潮五郎という作家は司馬遼太郎の師匠のような人だが、海音寺の作品に『平将門』がある。 『平将門』の登場人物に貴子という姫が登場する。貴子は皇族だが、親の官位が低いために貧しく、荒れ果てた屋敷に住んでいた。 京で宮仕えをしていた将門と恋仲になるが、将門の従兄弟の平貞盛が横恋慕し、貴子に言い寄って将門から奪い取る。しかし貞盛が田舎に帰ると、貴子は生活ができなくなり遊女に身を落とす。 遊女として日を送るうちに、一度田舎に帰った将門が再び上洛して貴子に会い、落籍されて将門と結ばれるが、いくさで将門の館が襲われた時に命を落とす。 略奪愛を私は否定しない。たとえそこに真の愛がなかったとしても。 否定し…