前回書いたように、『類聚近世風俗志』の東京出版同志会版を入手しなければならないので、「日本の古本屋」を検索してみた。すると、東京の文生書院に一冊だけ在庫があり、幸いにして購入できた。しかもそれは『近代出版史探索Ⅲ』545の田中貢太郎の旧蔵書で、送られてきた本の見返しには田中の蔵書印が貼られていたのである。 まず明治四十一年の国学院大学出版部初版との相違を挙げれば、大正二年の再版で一冊本、正価四円であること、表紙には本文の挿絵に似た三人の人物が描かれていること、著者名が喜田村季荘ではなく、守貞となっていること、奥付の編輯者は室松岩雄とそのままだが、発行者は日本橋区檜物町の東京出版同志会代表者の西…