期待していたのとだいぶ違った。 暗い。重苦しい。閉塞感。読んでいて楽しい小説ではない。角田光代といえば『八日目の蝉』の印象が強く、心情描写が巧みで綺麗で暖かみがある、繊細な文章を書く作家というイメージだったが、今作はひたすら暗い、先行き不透明な息苦しさしかない。 『幸福な遊戯』『無愁天使』『銭湯』の三編からなる短編集。 『幸福な遊戯』は、私ことサトコ、立人、ハルオの三人が、家族の真似事のようなアンバランスな共同生活を送る話。家族ではないがそこにある緩やかなつながりで成り立つ居心地の良い空間の描写は好きだが、それにもすぐに陰りが見えはじめ、何とか崩壊を認めまいとするサトコの空回りが痛々しい。切な…