ひつぱれる糸まつすぐや甲虫 高野素十 隣の少年、虫が大好きだけあって、虫を見つけるのが大得意だ。ある日、大事そうに見せてくれたのが広町緑地で捕まえたというかぶと虫。 そう言えば、昔からかぶと虫は虫の王様、持ち主はヒーローだった。「ちょっとだけ触らせてやるなんて」言われて、てのひらをさしだすと、ギザギザの爪が痛かったり、角で挟まれたり。びっくりして思い切り手をふると、かぶと虫が飛んで逃げてしまって、怒られたりしたものだ。 でも時々、かさこそという音と独特のにおいに気がついて、窓の下をさがしてみるといるのだ、かぶと虫が。おそらく灯りを求めて飛び込んでくるのだろう。さあ大変。とりあえず菓子箱に穴をあ…