超動く家にて (創元SF文庫)作者:宮内 悠介東京創元社Amazon 本格ミステリには『毒入りチョコレート事件』に(おそらく)はじまる「多重解決もの」というジャンルがある。たとえば貫井徳郎のある作品では、ある解決での探偵役が、次の解決では犯人にされるという趣向を四度も繰り返す超絶技巧が用いられている。この作品では真犯人は最後まで不明なのだが、作中の法則でいけば、おそらく最後の解決の探偵役が真犯人なのだろう。そしてそれはまさしく、最初に犯人と疑われた人物なのだ。すごいすごい。まるでシュニッツラーの「輪舞」ではないか。これを叙述トリックに応用した「多重叙述トリック」が考えられないだろうか。SFでは…