「ばあちゃん、どっちね?」 大声をあげて尋ねると、彼女は右の人差し指をまっすぐに伸ばした。そこは小さいころ従兄弟たちとよく歩いていた道であった。トキヲを背負った僕は彼女の指を道標に少しずつ歩きはじめる。 トキヲをおんぶしたのはこれが初めての経験であった。同時に、四歳のときに彼女におんぶされて花火を見に行ったことを思い出し、あのとき花火を見たいと言ったのはもしかして自分だったのではないかと考えた。(坂口恭平『徘徊タクシー』新潮文庫、2017) こんにちは。子育てをしていると、自分が子どもだった頃のことを折にふれ思い出します。大掃除をしたり、初詣の計画を立てたり。昔、父や母と一緒によくやったなぁ、…