最初は学校も上下各々十級に分れていたのが、後には六級になり、最後には上中下級に分かれ、同じ試験を何度もして、同じような卒業証書を何枚ももらったことを覚えている。単語篇地理初歩から読み初めて、読本も年に二三度は変わるのである貧乏人は到底本が買えぬというて退学したことがある。僕は算術と習字が大きらいで、歴史と作文と地理といたずらが大好きだった。算術の勝負や清書の点取ではややもすると敗北するが、それでも級の第一を占めていた。今から思うと教員先生(実に好人物で、近眼で、煙草好きで、僕を非常にかわいがって、そうして誤謬(うそ)ばかり教うる先生だった。その金科玉条は寛の一字で、名は増見先生といったようだ)…