寝る前にスマホを見ないだけで、こんなに心が静かになる夜があるなんて コンビニの袋を床に置いたまま、私は部屋の真ん中で一度だけ立ち尽くした。外は1月の空気で、玄関のドアの隙間から冷えた匂いがすこし入ってくる。 エアコンの温風はちゃんと出ているのに、手先だけがまだ冷たい。いつものこと。うまくいかなかった日は、体が帰宅の手順を忘れる。 今日うまくいかなかったのは、ほんとうに小さなことだ。 昼の会議で、言おうと思っていた一言が喉の奥でほどけて、出てこなかった。誰かが「じゃ、次の議題で」と流して、私も流れたふりをした。 帰り道、駅のホームでやっと「あの時言えばよかった」と思い出して、でももう終わっている…