毎日、たくさんの人生に触れ、たくさんの「想い」に出会います。 朝の挨拶ひとつ、食事の時間のひとコマ、夜の消灯前の静けさ。そのどれもが、教科書には載っていない大切な学びで満ちています。 この仕事を始めた頃、私は「介護は技術だ」と思っていました。 安全に移乗すること、食事を誤嚥なく介助すること、排泄や入浴を手際よく行うこと。 確かにどれも大切です。でも、現場に立ち続けるうちに、胸の奥に残るのは、技術よりもずっと人間らしい出来事でした。 ある日、昼食の時間に起きたことです。配膳を終え、皆さんが食べ始めたそのとき、一人の入居者様が不安そうな顔で私を呼び止めました。 「私の分、少ない気がするの」。その方…