必殺仕事人V激闘編 → 必殺まっしぐら! → 必殺仕事人V旋風編
人気時代劇「必殺シリーズ」第26弾。後期必殺シリーズの人気キャラクター、秀を主役にした作品である。
1986年(昭和61年)8月8日より10月31日まで全12回にわたって放送された。
当初は「必殺仕事人アクション編」というコンセプトから企画され、必殺シリーズの中でも派手なアクションを全面に押し出す形を目指し、映画『必殺!III 裏か表か』で必殺に復帰した飾り職の秀が主役となった。また、放送前より人気のあったファミコンゲーム「スーパーマリオブラザーズ」を材に、秀のキャラクターを一新。「スーパーマリオ」におけるマリオが目指す相手、ピーチ姫にあたる存在として、秀の恋人である遊女見習い・若紫が登場。彼女を身請けするための多額の依頼料を貯めるべく裏稼業を続けるというのが、この作品の大前提である。ちなみに、クッパに相当するラスボスの武器はハンマー(玄能)。
また「新必殺仕舞人」以来久々の旅モノのエッセンスを加えており、例え標的が長崎だろうが、徳島だろうが、秀は若紫を身請けするため、仕事を遂行するべく向かうのである。その途中、敵対する仕事人組織に命を狙われる演出が挿入されており、より一層の緊迫感を持たせている。
今回、秀は一匹狼ではなく、一人の元締の下で仕事を請け負う形を取っている。このことから、従来の仕事人シリーズとは差別化される、大きな要因となった。秀が仕事をする背景には、秀が所属する神楽坂宗右衛門一派と、敵対する向島仁十郎一派による江戸の闇組織の抗争があり、秀もその抗争に巻き込まれていく。
滝沢馬琴の日記を解説に加えるなど、娯楽面にも一工夫を加えている。
また毎回、歴史上の人物が何らかの形で登場するのも、見所の一つである。
天に二つの陽がないように
闇の世界も二つはいらぬ
江戸の二つの闇組織
どちらが勝つかサバイバル
まず かんざしの秀を消せ
暗闇指令の飛ぶ中を
秀 麻呂 東吉 桂馬のお銀
悪に向かってまっしぐら
(作:山内久司/語り:玉井孝)
主水たちと別れ、江戸に戻った秀(三田村邦彦)は、表稼業はしがない蕎麦屋の主人でありながら、裏の顔は江戸で一、二を争う裏稼業の元締・神楽坂宗右衛門(睦五郎)配下の仕事人となり、裏稼業を続けていた。
元締から秀に仕事が入った。相手は吉原名主総代・丁字屋藤七(辻萬長)だ。奉行(溝田繁)とヤクザ・鉄輪の権造(牧冬吉)と組んで新しい吉原の建設を企み、長屋の住民から多くの恨みを買っている極悪人である。
秀は早速吉原へ潜入。一つは丁字屋藤七の顔を確認すること。もう一つは恋人の遊女見習い・若紫(菅原昌子)に仕事料の前金50両を渡すためである。秀はこの遊女見習いを将来身請けし、共に暮らすつもりでいるのだ。若紫との逢瀬の後、丁字屋藤七を探す秀だがなかなか見つけることが出来ない。そこへ謎の女性がやってきて、秀に耳打ちする。「丁字屋藤七はあそこですよ……」なぜ自分が丁字屋藤七を探していることをこの女は知っているのか……不審に思った秀は女の帰り道に得物の簪で襲い掛かる。女は小太刀で応戦。女は秀のことを知っており、名を桂馬のお銀(秋野暢子)と名乗った。その正体は仕事人で、神楽坂宗右衛門が秀に送った助っ人だったのだ。だが、秀はプライドの高さから助っ人を断るのだった。
ある夜、秀は丁字屋藤七を一人で狙うが、謎の男に邪魔をされる。槍を使うその男に襲い掛かるが、寸でのところで逃げられてしまうのだった。その後も、敵対する仕事人組織・向島仁十郎(藤岡重慶)一派の仕事人に命を狙われたりと散々な目に遭い、苛立ちが募っていく。
そんな時、桂馬のお銀から繋ぎが来る。「今夜五つ、八幡様の境内へ……」境内でお銀と落ち合うも、一人で仕事をしようと心に決めている秀はイマイチ乗り気ではない。そこへ、お銀の昔の恋人であり、仕事人である高天原綾麻呂(笑福亭鶴瓶)がやってくる。自殺をしようとしているのを秀が止めたら、逆に集ってきた男だ。綾麻呂も秀と組んで仕事をしたいと申し出るが、集りを働くような人間と仕事は出来ないとはっきり断る。綾麻呂は秀に「あれはワテの病気なんや」と侘びを入れた後、頭を下げて頼み込む。
「長屋の連中が丁字屋の差し金で権造一家に斬られてんのを傍で見てたら……俺かて人の子や。……血が騒ぐんや。一緒に組ましてくれ」
仕事に対する自らの感情を話す綾麻呂の真剣な眼差しに秀はしぶしぶ承諾する。
その時、男の声がした。「その仕事、俺にもやらせてくれよ」現れたのは、以前秀の仕事の邪魔をした謎の男だった。香車東吉(西郷輝彦)と名乗るその男に、秀は「いずれケリを付けてやるぜ」とご挨拶。仕事料の分配と共に、新たな仕事人チームが発足したのだった。
狙う日取りは新吉原着工日。住民の暴動に紛れての仕事が始まる……。