たれにより 世をうみやまに 行きめぐり 絶えぬ涙に 浮き沈む身ぞ 嫉妬をする紫の上をなだめる源氏の君 (紫の上に by 源氏の君) 〜いったい誰のために このつらい世を海や山にさまよって 止まることのない涙を流して 浮き沈みしてきたのでしょうか 【第13帖 澪標 みおつくし】 別れの夕べに前の空を流れた塩焼きの煙のこと、 女の言った言葉、 ほんとうよりも控え目な女の容貌の批評、 名手らしい琴の弾きようなどを 忘られぬふうに源氏の語るのを聞いている女王は、 その時代に自分は一人で どんなに寂しい思いをしていたことであろう、 仮にもせよ良人《おっと》は 心を人に分けていた時代にと思うと恨めしくて、…