井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(17) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム 2 エゴイズムの問題 の続き(p.54~)である。 井上は、面白い例を示しているので(p.58)、これを最初にとりあげよう。(傍点は緑字にした) ある会社の高給の秘書のポストにX,Yの2女性が応募している。採用されるのは1人だけである。Xは才能は豊かであるが器量はあまり良くない。Yは自他ともに認める美人であるが才知に欠ける。この会社の2人の共同経営者AとBがどちらを採用するかで対立した。Aは「俺は才女より美女が好きだからYを採る」と言い張り、Bは「俺は才能を美貌より好むからXを採る」と頑強…