幽霊の手引:高山怨縁 1917年(大6)大川屋書店、怪談百物語第6巻。 作者高山怨縁(おんえん?)については生没年を含め、まったく情報がない。大川屋書店の企画で『怪談百物語』という怪奇物のシリーズ本が大正期に出されており、この一作の他に同シリーズの中に三作書いている。軽快な語り口で読物本の専属作家だったと思われる。「幽霊の手引」とは「亡霊の指図」を受けて悪事を露見させる結末のことだが、古くは「ハムレット」の父王の亡霊にも通じる。書き方は木目が粗く、怪奇話とお家騒動、宝探しの冒険という三つの要素が混在し、肉付けによっては長篇物になりうる素材に面白味があった。他に狒々退治の武勇伝と民間伝承風の白蛇…