夫人もいっしょに見ていて、 「皆よくできているのですから、 お召しになるかたのお顔によく似合いそうなのを 見立てておあげなさいまし。 着物と人の顔が離れ離れなのはよくありませんから」 と言うと、源氏は笑って、 「素知らぬ顔であなたは着る人の顔を想像しようとするのですね。 それにしてもあなたはどれを着ますか」 と言った。 「鏡に見える自分の顔にはどの着物を着ようという自信も出ません」 さすがに恥ずかしそうに言う女王であった。 紅梅色の浮き模様のある紅紫の小袿《こうちぎ》、 薄い臙脂紫《えんじむらさき》の服は夫人の着料として源氏に選ばれた。 桜の色の細長に、明るい赤い掻練《かいねり》を添えて、 こ…