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悪魔の証明

(一般)
あくまのしょうめい

[英] devil's proof
[ラ] probatio diabolica
悪魔の証明とは、「ある事実・現象が『全くない(なかった)』」というような、それを証明することが非常に困難な命題を証明すること。例えば「アイルランドに蛇はいる」ということを証明するとしたら、アイルランドで蛇を一匹捕まえて来ればよいが、「アイルランドに蛇はいない」ということの証明はアイルランド全土を探査しなくてはならないので非常に困難、事実上不可能であるというような場合、これを悪魔の証明という。

新約聖書にあるサタンがイエスを試した逸話から来ている。ある論争に際して、そもそも挙証が困難な命題の証明を相手に迫ることもひとつのディベートのテクニックではあるが、それを悪魔の証明だ、と相手が指摘することが挙証責任を転嫁する際の決めぜりふであるということには必ずしもならない。

注意点

「『全くない』ことを証明するのは不可能に近い」のであって、「『全くない』のは確実である」という意味ではない。
また、「ある一連の事実が『全て本当にあった』」ことを証明することも、言い換えれば「その一連の事実に『嘘は全くない』」ことを証明することであり、同様に不可能に近い。
(補注:すなわち「ある事実・現象の有り無しを『100%』確定するのは不可能に近い」ということである)

犯罪を犯した証拠はないが、犯罪を犯していないという証拠もないので無罪ではない、などという事例には適用できない。
他の例では、法の存在などが挙げられる。法の存在は、多数の人が信じることによって存在するのであり(いわば多数決である)、法の存在が証明できないからといってその存在は否定されもしないし、むしろ存在する可能性の方が高い。では多数決により存在が決定されるのかといえばそうでもなく、天動説のような例も挙げることができる。が、神は天動説と同じようにして証明することはできないという性質を持っている。天動説は実験によってその存在を否定できるが、神はいかなる実験においてもその存在を証明することも、否定することもできない。
このように、悪魔の証明は詭弁的な性格を多く孕み、適用できない事例も多く存在する。実際に使うときには細心の注意をはらうべきだといえる。

科学関連議論への補足

ここ数年、疑似科学や似非科学の議論で「悪魔の証明」という用語を多用する人が居るが、これも要注意である。「悪魔の証明」という比喩は、たしかに法律分野ではある程度認知されているが、科学・数学分野では20世紀はじめの有名な大論争を経て、今ではより厳密な用語を使った精緻な議論が可能となっている。科学の専門家を自称しながら、科学議論であえてこの分野違いで不適切な用語(「悪魔の証明」)を持ち出す人が居たら、それは厳密な議論による追求を避けて何かを誤魔化そうとしているソフィストの類(あるいはその影響下にある人)かもしれない。



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