現世の悲しみと、かすけき喜び 心に深く刻まれた一首の和歌があります。病と向き合いながら生きた吉野秀雄さんの「苔径集」の最後の歌です。その言葉は今なお私の心の琴線に触れ続けています。 かなしみを 基(もとゐ)とすなる うつし世に かすけきものか このよろこびは ―― 吉野秀雄 苔径集 この歌は、「悲しみがこの世の根底にあるのだ」と、この歌は静かに語りかけてくるようです。そして、そのかすかな喜びこそが、生を支えるものだと読めるでしょう。 一見すると暗く重たい世界観に映るかもしれません。しかし、不思議なことに、どん底の絶望の中でこの歌に出会い、新たな生きる勇気を見出した人がいるといいます。 火宅(ひ…