佐伯地方に残る古道は概ね峠越えか尾根伝いの道である。その尾根道を辿っていると時に気になる山に出会う。その一つが鶴見半島の中程にある「殿上山(とのがみやま、331m)」である。その山名が気になって仕方がない。日本にもそう多くはない山名と思われる。福井県の殿上山(てんじょうさん、683m、中腹に白山権現を祀る禅定神社)、福島県の殿上山(てんじょうさん、810m)などがある。北九州には似たような名前の戸の上山(とのうえやま、518m、山頂に戸の上神社)がある。 本来、「殿上」とは宮中を意味する。「殿上人」と言えば、宮中清涼殿の「殿上の間」に昇ること(昇殿)を許された者を言う。官位五位以上の上級貴族に…