排日移民法制定と同時期、日本における日米未来戦記を定着させる上において、大きな役割を果たしたのが、ヘクター・C・バイウォーターの『太平洋大戦争』(1925年)の翻訳刊行だった。ここで、水野広徳に続く海軍出身作家の石丸藤太が登場し、毎年のように警鐘型評論としての未来戦記を発表する。その反面、文芸作家崩れの池崎忠孝が、楽観的でセンセーショナルな評論を多数刊行し、この2人が両論として日米未来戦記の世界を形作っていくことになる。一方で、新兵器がにぎやかに活躍するエンターテインメンとしての日米未来戦記のヒット作が多数刊行されるなど、多士済々の様相を呈する。(猪瀬直樹『戦争シミュレーション』講談社、202…