「天下茶屋」前より。(撮影 丹沢和仁) 河口湖と、向う岸や手前の街まちと、左右から下る稜線とが織りなす逆さ富士が見えるポイントだそうだ。なるほど……。 一別以来の挨拶もそこそこに、まずはまずはとご夫妻の愛車に招じ入れられ、いの一番に向ったのは「天下茶屋」だった。ご存じでしょう? と振られて迂闊にも、咄嗟には思い出せなかった。井伏鱒二、太宰治の名が出て初めて、あゝそれかとうっすら思い当った。しかしこゝからはかなり遠かろう。まさかそんな所までご案内いたゞけるとは、予想外だった。徒歩や公共交通機関しか知らぬ身と、愛車移動のかたがたとでは、とかく空間概念が異なる。 案の定、アルペンの回転スキーさながら…