【🪷古文】 「乱り心地は、いつともなくのみはべるが、 限りのさまになりはべりて、いとかたじけなく、 立ち寄らせたまへるに、みづから聞こえさせぬこと。 のたまはすることの筋、 たまさかにも思し召し変はらぬやうはべらば、 かくわりなき齢過ぎはべりて、 かならず数まへさせたまへ。 いみじう心細げに見たまへ置くなむ、 願ひはべる道のほだしに思ひたまへられぬべき」 など聞こえたまへり。 いと近ければ、心細げなる御声絶え絶え聞こえて、 「いと、かたじけなきわざにもはべるかな。 この君だに、 かしこまりも聞こえたまつべきほどならましかば」 とのたまふ。 あはれに聞きたまひて、 「何か、浅う思ひたまへむことゆ…