――全員が正しいのに止まる町工場を、次の世代へつなぐ十五の決断 第九話 教えた人が損をする会社 野上が村瀬に教えた二十六時間は、会社の記録では、二十六時間の「非稼働」だった。 週明けの月曜日、午前八時三分。 佐伯は工場事務所の端末で、前月の個人別実績を開いていた。 野上鉄治。 直接作業達成率、八二・七%。 基準の九〇%を下回った欄に、黄色い三角が付いている。 明細を開くと、加工映像を撮った七時間半は〈非稼働〉、過去の判断事例を聞き取った十時間は〈会議〉、村瀬へ確認加工を教えた八時間半は〈応援〉に分かれていた。 合計、二十六時間。 いずれも、野上が自分の加工数を増やさなかった時間である。 一方、…