知っている顔が一人もいない街まで出てきて、小学生が二人、並んで歩いている。片方はセーラー服、片方は学ラン。すれ違う大人は誰も振り返らない。振り返られないために、わざわざ遠くまで来ている。 セーラー服のほうが二鳥修一で、男の子だ。学ランのほうが高槻よしので、女の子。ふざけて交換したわけでも、誰かにやらされたわけでもない。修一は女の子になりたいと思っていて、よしのは男の子になりたいと思っている。そしてそれを知っているのは、互いにほぼ相手だけだ。 教室に戻れば、二人は別の顔をしている。修一はおとなしい転校生で、よしのは背が高く、女子から「高槻くん」と呼ばれている。出かけるときだけその格好になり、帰る…