『放蕩の果て 自叙的批評集』/福田和也/草思社/2023年刊 いずれ忘れてしまうだろうから、今のうちに書いておこう。九月の末、福田和也さんの葬儀が済んだ頃にこんな夢を見た。「死ぬのが怖い、行ったら戻れない」 どこかの公園だか河川敷だか、西陽に染まった野っ原で先生が泣いている。「仕方ないじゃないですか。私は大丈夫ですから」 そう言って背中をさすってあげる夢だ。ロロピアーナのジャケット越しに触れた背中は、まだ肉が付いていた頃の、私が知っている福田先生の背中だった。 『ユリイカ』から寄稿依頼があったのはその一ヶ月後くらい、世に出ている追悼文の類に目を通しながら、さて何を書こうかと考えた。前回更新した…