宝永4年8月25日。夜、鈴木藤入の14になる娘さちを小僧上がりの19になる千介が連れて出奔する。あちこちへ追っ手をやると、熱田へ向かった追手の若党と鑓持が船番所で帳面につけた者を尋ね調べると似た者がいた。すぐに小舟で追いかけ、船へと乗り移った。この時千介は娘を切ろうとする気配であったが、乗り合わせた者を憚ってじっとしていたと云々。鑓持ちが欺いて言うには間違いなくぬけ参りだと。金子などはあるのか、家ではたいそう心配しているのでまずは家に戻り、下女などを連れて戻ってくるようにと。千介は決めかねているようであったが、弁舌を尽くし、参宮のことではいろいろと立腹されているとなだめすかして2人を連れて帰っ…