「人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり」 桶狭間出陣の朝、織田信長が舞ったこの一節。 戦国の覇者が愛したこの言葉の原点には、ある坂東武者が流した涙がありました。 舞台は、信長の時代から遡ること約400年前。 一の谷の海岸線で、一人の武士が、十六歳の少年の首を斬った後、声をあげて泣いたのです。 なぜ、屈強な坂東武者は泣いたのか。 そして、その物語はどうして信長の心を捉えたのか。 今回は『平家物語』屈指の名場面「敦盛の最期」を、現代語訳でじっくり味わっていきましょう。 運命の海岸で出会った二人 「敦盛の最期」に登場するのは、対照的な二人の武士です。 討ち取られた側:平敦盛(17歳)…