文楽四月公演第二部は『摂州合邦辻』。無論見せ場は合邦庵室なのだが、その前の万代池の段も良かった。「仏法最初」四天王寺という聖俗綯い交ぜの霊場の雰囲気、具体的には合邦の説法の猥雑さと零落の貴公子の嘆きとが一場のなかに自然と共存できる不可思議さがこの浄瑠璃にはどうしても必要なのだ(一時期あの辺りに住んでたことがあり、あの雰囲気は実感としてもよく分かる)。 民衆の混沌たる信心も生の悲惨も何もかも受け止めてくれる場があればこそ、玉手御前の死も浄化されて見られるものとなる。だから、この段の最後が「仏法最初の天王寺、西門通り一筋に、玉手の水や合邦が辻と、古跡をとゞめけり」と閻魔堂の縁起を説いて締めくくられ…